抽出の広がり
       都立大学工学部工業化学科  加藤 覚

 

抽出と他分野の接点はどこにあるのだろうか?


 抽出の広がりは、抽出を眺める角度によって全く違った様相を呈するであろう。2−8「抽出一般」の節には、抽出と接点を持つ8つのテーマが掲げられている。その接点を挙げてみよう。

 2−8−2の「溶剤の選定」は、分離剤として物質を利用する多くの分離法と接点を持つであろう。
 2−8−3の「設計計算」は、蒸留をはじめとする多段の平衡分離法と接点をもつであろう。
 2−8−4の「ESPLIM」は、接触装置の効率の向上という点で、しばしば深刻な問題を引き起こす液体を扱う多くの接触操作と接しているであろう。
 2−8−5の「反応と溶媒効果」は、溶質−溶媒間相互作用が重要な役割をになう点で抽出と接しているであろう。
 2−8−6の「イオン交換」は、金属錯体を分離に利用する点で抽出と接しているであろう。
 2−8−7の「晶析と抽出の組み合わせ」は、溶質−溶媒間相互作用の温度依存性を分離に利用するという接点があるであろう。
 2−8−8の「転相現象」は、塔槽中の相分散という点で多くの接触操作と接点を持つであろう。
 2−8−9の「膜分離」は、錯体形成を速度差分離へ利用するという点で抽出に示唆を与えるであろう。

 視点を変えることによって更に多くの接点が現れるであろうが、抽出法の多様性がこの節のテーマによく現れていると思われる。