「化学教育ジャーナル(CEJ)」第2巻第1号/採録番号2-3/1998年7月4日受理
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インターネットで調べられる化学情報

時実 象一
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インターネットには玉石混交、さまざまな情報が流通しています。その中で実際に役に立つ化学情報を手に入れることは必ずしも簡単ではありません。どうしたら自分の欲しい情報が手に入るか、目的にわけて解説してみましょう。

Fe
周期表 化学構造 物性・スペクトル 安全性 試薬カタログ
文献検索 文献複写 大学 会社 学会

Fe 1. 元素周期表が見たい

日本語の周期表も若干あります (工学院大学伊藤由紀子氏など)。しかしアメリカのものはなかなか独創性があって一見の価値があります。たとえば Comic Book Periodic Table はメタルマンのアメリカン・コミックがでてきます。The Periodic Table of Poetry は各元素について詩がのっていますが、残念ながらまだ欠番があります。The Pictorial Periodic Table は元素毎に写真がのっているほか、物性で検索できます。ロス・アラモス国立研究所の周期表や WebElements には詳しい情報がのっています。

2. 化合物の構造を知りたい

インターネットでは簡単に主な化合物の構造を見ることができます。ChemFinder で化合物名や分子式で検索すると、名称と、平面構造、簡単な物性 (例は Vitamin C) が示されます。さらに下の方を見ていくと、いろいろな情報源が示されています。ここで Information about this particular substance とあるのはこの化合物についての情報源です。一番上の 3D Molecular Modeling の項の Information about this particular substance をクリックすると、3D 構造が表示されて、回転もできます。これは東京薬科大学のページです。ただし、表示には MDL 社の Chime をダウンロードしてブラウザにインストールする必要があります。類似のサイトとしては KlothoWeb Molecules があります。

3. 化合物のスペクトルや性質を知りたい

ChemFinder では化合物名や分子式で検索でき、簡単な物性も見ることができます。さらにリンクしているサイトに飛ぶと、スペクトルや毒性などその他の情報を見ることができます。たとえば Vitamin C については豊橋技術科学大学のページに H NMR のデータがあります。まとまったサイトとしては、科学技術振興事業団研究基盤情報部の FACTrio では熱物性、結晶構造、質量スペクトルなどが、通産省工業技術院の Spetral Data Base System (SDBS) では質量スペクトル、13C NMR、H NMR などが調べられます。米国のものでは NIST の NIST Chemistry WebBook も熱化学、反応熱、赤外スペクトル、質量スペクトル、イオン・エネルギー、流体熱物性などのデータがあります。

4. 化合物のカタログが見たい

日本語のものとしては東京化成工業のカタログがあります。化学製品全般としては日本化学工業協会が製品データベースを作成しています。これは物性や安全性データへのリンクがあります。海外のものとしては Sigma-Aldrich Catalog Search があります。ここでは Sigma, Aldrich, Fluka, Supelco のカタログの化合物が名称で検索できます。

5. 化合物の毒性、安全性を調べたい

化学物質の安全性については化学品検査協会が数十種の化学物質について「安全性評価シート」を作成しています。また和光純薬が試薬の「製品安全データシート (MSDS)」を提供しています。環境毒性については神奈川県環境科学センターの「化学物質データベース (kis-net)」があります。国外のものとしては ECDIN に詳しい情報がのっています。University of Akron の Hazardous Chemical Database には 1991 件の化学物質の物性や安全性のデータがあります。取り扱いの安全性に関する物質安全性データ・シート (MSDS) を集めたサイトには University of UtahVermont Safety Information on the Internet があります。

6. 化学に関する文献を調べたい

UncoverWeb は無料で広い範囲の学術文献が検索できますが、文献標題と著者名しか検索語になっていないので探している文献が見つからないこともよくあります。

無料で学術文献を探すには、医学系なら米国国立医学図書館の PubMed があります。Web で簡単に検索できます (ユーザ登録は必要です)。日本特許については最近始まった特許庁のサービスがあります。まだ最近の 5 年分しか検索できませんが、1999 年からは過去にさかのぼる予定です。

本格的な検索はやはり専門のデータベースでなくてはむづかしいようです。STN Easy では日本語のインタフェースで化学 (Chemical Abstracts) を含む世界中の科学技術文献を検索できます。また Enjoy JOIS も便利です。ここにも Chemical Abstracts が入っています。STN Easy と Enjoy JOIS のパスワードは科学技術振興事業団科学技術情報事業本部 (JICST) の各支所で入手できます。Enjoy JOIS は最近購読料が無料になったので個人でも使いやすくなりました。

雑誌名がわかれば、多くの雑誌で最近号の目次 (Table of Contents) や抄録は無料で見ることができます。たとえば Nature、ScienceSpringer-Verlag の雑誌、日本化学会の Bulletin of Chemical Society of Japan化学と教育などです。

7. 論文を手に入れたい

論文を無料で手に入れるのは一般にむづかしいといえます。若干の学術雑誌はインターネット上で無料で公開されていますので、その中に見たい文献があればそこで調べることができます。現在無料で見ることのでる学会誌は、日本化学会の Bulletin of Chemical Society of Japan (1999 年 1月号から有料公開予定)、日本生化学会の Journal of Biochemistry、日本物理学会の Journal of the Physical Society of Japan、日本応用物理学会の Japanese Journal of Applied Physics などです。また文部省学術情報センター が「電子図書館サービス (NACSIS-ELS)」として学会誌を光学スキャンしてインターネットでの提供を おこなっています。現在 54 学会194 タイトルの情報を収録しています。これも現在のところ無料です。以上のものには会員登録の必要なものもあります。

前述の Enjoy JOIS では簡単に文献複写の注文ができます。

8. 大学の研究室にアクセスしたい

Nifty-Serve の「化学関連サイトへのリンク」に化学系の学科のリンクがのっています。

9. 会社にアクセスしたい

化学工業日報社の「国内化学関連企業リンク集」には 125 社がリンクされています。また Yahoo! Japan の化学企業のページには 150 社ほどのっています。

10. 学会にアクセスしたい

学術情報センターの「学会ホームビレッジ」に日本の主な学会が網羅されています。

おわりに

その他の情報源について知りたい方は <http://www.246.ne.jp/~cumulus/WWW/Website.htm> をご参照下さい。




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