「化学教育ジャーナル(CEJ)」第5巻第1号(通巻8号)発行2001年7月28日/採録番号5-14/2001年4月30日受理
URL = http://www.juen.ac.jp/scien/cssj/cejrnl.html


においの教材化

小田切 真 常葉学園大学教育学部
modagiri@tokoha-u.ac.jp

1.はじめに

 縁日の屋台から流れる甘い香りが子どもたちを誘う、「綿菓子」「べっこう飴」に「カルメ焼き」。香ばしいにおいに誘惑され、ついつい触手が伸びてしまう、「焼きイカ」「焼きトウモロコシ」。職場帰りの我々を襲う「焼き鳥」に「ウナギの蒲焼き」は、風向風力までをも計算し、周到に計画された陰謀ではないかと感じることさえある。

 さて、「におい」。我々の日常生活は様々な「におい」で満ちあふれている。衣・食・住のすべてに関わっているといっても過言ではないであろう。また、思春期の若者にとっては「自分自身のにおい=体臭」は悩みの元にもなり、「おじさんのにおい≒悪臭」は天下の嫌われものなるなど、個々人の問題として意識化されている。

 このように誰もが関心を持つはずの「におい」なのだが、単独に教材化されていないのが現状である。「におい」は日常生活に密着するとともに、個に応じた問題を課題化可能な素材である。ぜひ、問題解決的学習に導入すべきである。そして「理科離し」させてしまった生徒たちを、もう一度「科学することの楽しみ」の場へ引き戻し、科学的な見方や考え方を発芽させたいと思う。そのような願いを込め、「においの教材化」を論じていく。

2.「におい」で何を学ぶのか(学習指導要領的な目標の具体的な位置づけ)

 素材を教材化する方法は多様であるが、ここでは学校における実践の可能性を高めるために、あえて学習指導要領から逸脱しない範囲で提案することとした。また、筆者の実践1)より本教材はどの学校段階においても実現可能であることが明らかであるため、その系統性を示す目的も含め小学校及び中学校の学習目標も示すこととした。

小学校理科B区分「物質とエネルギー」の学習目標として
 日常生活の様々な場面を想定した「香り」に親しみ、「食品のにおい作り」や「世界にひとつの自分だけの香水作り」を行い、においの不思議な役割を考える活動を通して、嗅覚に対する認識を深める。2)

中学校理科第1分野「身の回りの物質」の学習目標として
 においに関する事物・現象に対する関心を高め,その中に問題を見いだし意欲的に探究する活動を通して,課題を解決したりする方法を習得させる。また、身の回りの「におい物質」についての観察,実験を行い,観察・実験技能を習得させるとともに、その生活利用などについて理解させ,科学的な見方や考え方を養う。3)

高等学校理科「化学T」及び「化学U」の学習目標として
 日常生活と関係の深い「におい」を探究し,カラメル作りやメイラード反応を理解させ,「におい物質」について科学的な見方ができるようにする。また、天然香料及び合成香料を探究し,それらの性質や利用について理解させ,化学の成果が日常生活に役立っていることを認識させる。4)

 ここでは、理科(化学)を主眼に目標を設定しているが、この教材をより生活化することによって「総合的な学習の時間」に相応しいものが構造化可能であることを付記しておく。(筆者は日本の「香道」と結び付ける実践や各国の「香りの歴史」と結び付けながら実践5)している)

3.「におい」で何をするのか(高等学校化学及び中学校理科での実践報告を中心に)

学習の目標

 人間は嗅覚の退化した動物だと言われている。しかし、「におい」は体験と結びつき記憶を強固にする重要な意味を持っている。また、微妙に人の感情を支配することも知られている。ここでは、
 (実験)日常生活に位置づいている「香料」について調べる
 実験2カラメル作りとメイラード反応を実験を通して学ぶ ※注1
 実験3)ブドウの香りやオーデコロンを作ってみる
という3つの学習活動から選択して(あるいはすべてを)学習することにより「におい」の不思議な役割についての科学的な見方や考え方を養う。

学習の導入例

 ・家に帰ってすぐに(玄関で)「今日の晩ご飯はカレーだ」とわかるのはなぜだろうか。
 ・「仏壇にお線香」というのはいつの時代から始まったのだろうか。また、お線香の正体は何だろうか。
 ・一度は食べたことのあるキャラメル。ところでキャラメルって何だろう。
 ・店先で焼いている焼き鳥は「たれ」と「塩」のどちらが多いのだろうか。また、その理由は何だろうか。
 ・いろいろな料理に使われているハーブ。その効用は香りにあるのだろうか味にあるのだろうか。
 ・お風呂に入浴剤を入れるのは何のためだろうか。
 ・香水を選ぶ基準は何だろうか。また、嫌いな香水はどのようなものだろうか。
 ・蚊取り線香が蚊を退治するのはなぜだろうか。また、どうして人間は平気なのだろうか。
 ・「照り焼き〜」とはどういう料理のことを呼ぶのだろうか。
 ・記憶に残っている「におい」にはどのようなものがあるだろうか。
 ・アロマテラピーとは何だろうか。
 ・においを表現する言葉にはどのようなものがあるだろうか。

学習の導入提示実験例(においに興味を持つ)

○いろいろなものを鼻をつまんで食べたり飲んだりしてみよう。
 ・砂糖 ・塩 ・化学調味料 ・キャラメル ・飴 ・おせんべい ・コーヒー ・ココア ・緑茶
○どちらを食べたいか比べてみよう。
 ・茹でたトウモロコシ
 ・茹でた後でホットプレートで焼いたトウモロコシ
 ・茹でた後にホットプレートで焼き、醤油をかけたトウモロコシ
 ・茹でた後にホットプレートで焼きながら醤油をかけて焦げをつけたトウモロコシ

学習の展開例(においを調べる・においをつくる)

実験1.日常生活で使われている「香り」について調べてみよう。 

 ○使用する材料、用具(実験項目に合わせて用意する)

  ・ハーブティ ・ハーブオイル ・ハーブビネガー ・スパイス(各種) ・エッセンス(各種)
  ・フレッシュハーブ(イタリアンパセリ・オレガノ・セージ・タイム・バジル・ミント・レモングラス等) 
  ・入浴剤 ・歯磨き粉 ・マウスウォッシュ ・ソープ ・バスソルト ・バスオイル ・ボディシャンプー
  ・エッセッンシャルオイル ・湿布 ・香炉 ・香木 ・お香(各国の物) 
  ・パルファン ・オーデパルファン ・オードトワレ ・オーデコロン ・オーフレッシュ

 ○実験項目

  (1)家の中に置かれている香り(トイレ、台所、お風呂場、玄関、廊下、寝室、居間) 
  (2)日常品に使われている香り(入浴剤、洗剤、練り歯磨き、石鹸、シャンプー、線香)
  (3)食物のにおい&料理に用いられる香り(ハーブ、スパイス、※エッセンス) 

実験2.砂糖と化学調味料等を使って「におい」を作ってみよう。 (カラメル作りとメイラード反応6)

 ○使用する材料、用具

  ・お砂糖 ・化学調味料(味の素・いの一番・ハイミー等) ・ホットプレート(あるいは電熱器)
  ・耐熱型(マドレーヌの型やアルミ泊の薄皿など) ・割り箸 ・水(少量) ・鍋つかみ
  ・調味料等(醤油・塩・みそ・みりん・ソース・ケチャップ等) ※アミノ酸数種類7)
    アミノ酸試薬例 :グルタミン酸 , システイン塩酸塩 , バリン , プロリン

 ○実験の手順

 「カラメル作り」
  (1)ホットプレートを150-180℃(電熱器の場合は「弱:400W程度」)に設定しておく。 
  (2)耐熱型に砂糖を入れてホットプレートにのせる。 
  (3)割り箸でかき混ぜながら薄茶色に焦げるまで熱する。(溶けてもそのまま続ける) 
  (4)砂糖の色の変化とにおいの変化を調べる。(そのまま炭化するまで焦がして追究するのも効果的) 
    ※砂糖を3%〜5%程度の水溶液にして追実験すると認識が深まる。  
    ※グルコースと砂糖(市販の物)によるカラメル作りの様子を以下に示す(写真1→写真2)

 
写真1 「加熱前のグルコース及び砂糖の3%水溶液」


写真2 「加熱後のグルコース及び砂糖の3%水溶液カラメル
 

 「メイラード反応」
  (1)ホットプレートを180-200℃(電熱器の場合は「弱:400W程度」)に設定しておく。 
  (2)耐熱型に砂糖を入れてホットプレートにのせる。 
  (3)割り箸でかき混ぜながら薄茶色に色づくまで熱する。 
  (4)化学調味料をふりかけて手早く混ぜる。 
  (5)混合物の色の変化とにおいの変化を調べる。 
   ※化学調味料の種類及びを入れるタイミングで様々なにおいを作り出すことができる。 
  (6)同様の方法でいろいろな調味料(砂糖+醤油など)の混合を実験する。 
  (7)同様の方法でグルコースとアミノ酸の加熱実験を行う。 (写真3)
   ※この実験は各試薬等を3%〜5%程度の水溶液にして行う。(溶けにくいものは工夫が必要) 
   ※黄粉・ポップコーン・チョコレート・生肉等のにおいを作り出すことができる。 (写真4〜写真8)


写真3 「グルコースとアミノ酸の加熱実験の様子」(各3%水溶液を2mlずつ混合)

メイラード反応(写真4〜8)−アミノカルボニル反応・メラノイジン反応−


写真4 「砂糖+味の素」
100℃:黄粉
180℃:煎餅


写真5 「グルコース+システイン塩酸塩」
100℃:生肉
180℃:肉スープ


写真6 「グルコース+プロリン」
100℃:茹でたトウモロコシ
180℃:ポップコーン


写真7 「グルコース+バリン」
100℃:ライ麦パン
180℃:チョコレート


写真8 「グルコース+グルタミン酸」
100℃:ほとんど無臭
180℃:極弱いカラメル

実験3.ブドウの香りやオーデコロンを作ってみよう。 

 ○使用する材料、用具

  ・スポイト付きボトル ・密栓付きガラス容器(共栓付きフラスコ,蓋付きガラス製サンプル管など)
  ・匂い紙(あるいは濾紙) ・香水原料   
    ブドウ香原料例 : アルデヒド C-16 酢酸エチル アントラニル酸メチル ベルトール 1%(APV溶液) ※注2
    香水作り原料例 : ベルガモット油  ジャスミン油  レモン油  ライム油  プチグレイン油  シトロニエ  ローズ油  ローズウッド油

 ○実験の手順

 「ブドウの香り作り」
  (1)4つの原料の「単独での香り」を匂い紙で調べる。 
   ※それぞれの原料について文献等で調査すると化学的な理解が深まる。
  (2)指定された配合でガラス容器に1原料ずつ入れていく。(順不同で問題なし) 
    ※アルデヒド C-16(6.0) 酢酸エチル(10.0) アントラニル酸メチル(45.0) ベルトール 1%(APV溶液)(40.0) 合計(101.0)
  (3)1つ入れる毎に香りがどのように変化していくか調べる。
  (4)完成したブドウの香りを調べる。(本物のブドウ果実の香りと比較すると認識が深まる)

 「オーデコロン作り」 
  (1)7つの原料の「単独での香り」を匂い紙で調べる。 
   ※天然香料と合成香料について文献等で調査すると化学的な理解が深まる。
  (2)基本となる配合量について学びガラス容器に1原料ずつ入れていく。(順不同で問題なし) 
    ※ベルガモット油(20.0) ジャスミン油(1.0) レモン油(60.0) ライム油(10.0)
           プチグレイン油・シトロニエ(5.0) ローズ油(1.0) ローズウッド油(4.0) 合計(101.0)

  (3)1つ入れる毎に香りがどのように変化していくか調べる。
  (4)完成したオーデコロンの香りを匂い紙で調べる。(原液のため身体に付けないように注意!)
  (5)自分が作りたいオーデコロンの「香りイメージ」を描き配合量を決める。 
  (6)1つ入れる毎に香りを確認しながら配合量を調整してガラス容器に入れていく。
  (7)世界にひとつの自分のための香水を楽しむ。(各自ネーミングして発表会をすると楽しい)

4.「におい」をどのように学ぶのか

論理的に学び科学的思考力を身につける

 筆者は、「論理とは対象に関わる事実と問題との間の空白部分を類推するときの内在的な思考のきまり」と定義している。対象への関わり方には「直観」や「試行錯誤」等があるが、それだけでは、個々の事実は得られても、事実と事実とを関係づけていくことは難しい。さらに、関係と関係を結びつけていくことは一層困難となる。関係づけを進めていく思考の規則的な在り方が論理である。その論理の中で自然の事物・現象を対象とした際の見方・考え方・扱い方の能力を『科学的思考力』として定義している。8) 

 では、科学的思考力を身につけさせるためには、自然事象との出会いをどのように構成すればいいのだろうか。筆者は、井口等が提唱してきた「認識のものさし」(生徒が自然事象を認識していく基準を「類の論理」「因果の論理」「時系列の論理」の3つに大別する理論9))に基づき、自然認識の階層に応じた「実証性」と「再現性」の場を構成することで育むことができると考えている。この学習理論に関する討議は別の機会に譲るとして、ここでは学習展開のイメージを「香り認識の深化と論理階層の関係」として図1に示す。

 これまでに述べてきた「においの教材化」もすべてこの考え方により構成している。例えば、一番安価に活動可能な「実験2:メイラード反応」を例にその前後の学習展開法を時系列的に列挙すれば以下1〜7のようになる。

  1. 焼きトウモロコシの実験→醤油を焦がすことによって生じる「におい」に興味をもつ

  2. 醤油の加熱実験→どの段階まで熱することで香ばしいにおいが生じるのかの疑問を解決する<因果・時系列>

  3. 醤油の成分等についての調査→興味から関心へと変容する(科学的に探究しようとする態度の芽生え)

  4. アミノ酸と糖の加熱による反応であることの理解→基本的な概念や原理・法則を理解する<因果>

  5. 「実験2」(内容については略)

  6. この反応を利用している食品等の調査→学んだ知識を応用的・発展的に活用する<類・知の生活化>

  7. 食品の褐色・褐変現象について認識をあらためる→科学的な生活感を自己実現する

 先行経験や発達段階は異なったとしても、学習の基本はにおいに対する「興味」であり、わかりたいとする「意欲」に裏打ちされていなければならない。また、その内容は可能な限り生活に密着したものから構成したい。メイラード反応は「乳製品・菓子・果実・果汁・味噌・醤油・味醂」などの食品に関係が深く、誰もが目に・口にしているにも関わらず「よく知られていない」ものである。提示・演示の方法によって、どの年齢の子どもにも科学的思考力を育成できると考えている。


図1 「香り認識の深化と論理階層の関係

観点変更:「においを学ぶ活動」において、新しい知識を獲得させ、においに関する認識を発展させていくためには、前後の実験内容に対する意味付けと関連付けが重要な意味を持つ。最初は関係性が薄いと思われるであろう各実験内容についても、ある観点に着目すると同じ現象やきまりのもとに生起していることを理解させる。これは同一性の発見であり、「におい」というものを多面的に理解する活動となる。
構造変換:一方、事前実験により学んだ知識と新しく発展させるべき認識とが矛盾したり飛躍が必要な場合もある。この場合は歪みや躓きを補正・訂正するとともに、新しい枠組みによって知識を体系化しなければならない。これは、より本質的な問題解決学習であり、対立する論理に修正を加え概念構造を作り替えることによって、「におい」という現象を論理的に学ぶ活動となる。
基礎と目標:このように考えた場合、それぞれの実験は相互補完的な意味を持つ。よって、実験1の目標となるべく内容は実験2にとっての基礎的事項となり、実験2の目標は実験3の基礎的事項となる。そして、すべての活動を通しての到達目標が「香り認識の深化」であり、化学としての目的は「論理的に学ぶことによる化学性の育成」となる。

実験実習の在り方を再考する

 事物・現象について、事実や類・因果の関係を明らかにする目的で、人為的に整えた条件のもとで起こる現象を観察したり、適切な装置を用いて観測や測定をしたりしして、客観的な事実や関係を見いだしていくのが実験の価値である。この「においの教材化」では、可能な限り生徒たちが実習で学べるように特に配慮してきたつもりである。しかし、内容によっては教員が演示・提示した方が効果的な場合も少なくない。蛇足的な内容になるが、筆者の真意を理解してもらいたく以下に実験実習の在り方を整理しておく。

○原理法則を導き出す操作の手順を教員主体に進めるもの
  1. 演示実験:教員が装置等の説明をしながら現象についての解説を加えていく実験
  2. 提示実験:教員が自ら操作して現象を提示し、生徒に問題をとらえさせる」「結果を予想させる」「類・因果・時系列で説明させる」こと等を目的として行う実験
○生徒が問題を持ち、その解決の手法等を生徒の論理(生徒主体)によって進めもの
  1. 問題把握の場としての実験(現象に興味を持ち「なぜだろう」を学習課題として意識する実験)
  2. 情報を集めるための実験(着想・発想を構造化するための予備的実験)
  3. 考えを確かめるための実験(仮説に基づき検証する実験:論理的思考による再現・実証)
○生徒と実験の関わり(場の構成における留意事項)
  1. 目的意識を持って人為的な条件を加えて操作していくこと。
  2. 人為的な条件を加えたことによって起こる現象から、事実や因果関係を見いだし、意味づけていくこと。
  3. 自らの予想・予測・仮説などを、条件を整えて検証していくこと。
  4. 同じ条件のもとに変化を起こせば同じ結果が得られることを実証すること
  5. 自主的・主体的な実験を進めることを通して、科学的に処理できるという自己発見や自己実現ができるようになること。

5.おわりに

 本論では、実験1〜3を大単元的に述べてきたが、それぞれの実験は単独に単元構成可能である。また、化学では実験2を学習し、その発展的活動として総合的な学習の時間に実験1と3を展開する方法もある。その際は、一般にはあまり知られていない天然香料や合成香料について、「“におい”とは何か」「 “香り”は作れるのか」を導入として、「香水はどのようにして作られ・用いられているのだろうか」という興味・関心・疑問を抱かせ、その後の日常生活において‘嗅覚を意識させる’ことを目的とする。また、クラブや部活動、あるいは科学実験教室等で展開するのもひとつの方法である。あえて対象者を「女子」に限定とすることによって、実験教室等への参加に興味が薄い女子中高生を科学の世界に導くことも目的とする。実験2については、「母親のための科学実験教室 −台所から学ぶサイエンス−」として「お母さんの料理は科学者もビックリ仰天する内容が盛りだくさん」であることを認識してもらう。そして、料理・食文化の科学性・化学性を説明すると同時に、お父さんが焼鳥屋の計略にまんまとはまってしまう論理を好意的に理解してもらうのが目的である。

 本研究は、(財)日本科学技術振興財団の補助による「ものづくりキット開発」にて発表した内容を基に、それを学習教材として開発後実践してきた数多くのデータを分析・考察した上でまとめたものである。

参考文献

  1. 小田切真『メイラード反応の教材化』(日本理科教育学会 第51回全国大会 2001)
  2. 文部省『小学校学習指導要領解説 理科編』(東洋館出版社 1999.5)pp.9-15, 59-65
  3. 文部省『中学校学習指導要領解説(平成10年12月)解説 -理科編-』(大日本図書 1999.9)pp.10-12, 25-30
  4. 文部省『高等学校学習指導要領解説 理科編 理数編』(大日本図書 1999.12)pp.90-120, 192-198
  5. 小田切真『においをつくる』((財)日本科学技術振興財団「ものづくりキット開発」研究発表会 2001)
  6. 栗原賢三著『味と香りの話』(岩波新書 1998.6)pp.38-39
  7. 諸江辰男著『食品と香料』(東海大学出版会 1979.4)pp.136-142
  8. 小田切真『21世紀を展望した初等理科教育の在り方』(常葉学園大学研究紀要教育学部第18号 1997)
  9. 井口尚之編『新理科教育用語事典』(初教出版 1986.6)pp.131-134,  232-240
  10. 印藤元一著『香料の実際知識(第2版)』(東洋経済 1994.8)
  11. 天田圭子監修『香りのテクノロジー』(オーム社出版局 1997.12)


■注1:「カラメルメイラード反応に関する補足説明
カラメルについて:○糖類を100〜200℃に加熱すると脱水が起こり、甘い香りを発生しつつ、黒褐色あめ状物質に変化する。食品の着香料として使用されるカラメルは、グルコースから約4分子脱水した組成を示す。水に溶けて黒褐色を呈し、やや苦みを有する。(海老原態雄他「科学大辞典」(丸善 1985.3) p.243より引用) ○食用の糖質(ブドウ糖・ショ糖・転化糖・水飴・糖蜜など)を一定条件で熱処理して得られる黒褐色の液体、塊状、粉末またはペースト状物質。食品(醤油・ソース・嗜好飲料など)の着色料として使われる。○態糖分が加熱されて相互に反応して褐色し還元性の高分子化合物となる反応。カラメルの焦げ茶色に代表されるよく見られる焼き色に関係する反応の一つ。糖分だけが反応に関係し、糖類が加熱によって分解したり不規則に結合したりして、褐色のカラメルという物質ができる。(海老原態雄他「標準化学用語辞典」(丸善 1991.3) p.120より引用)
メイラード反応について:○アミノ酸またはタンパク質のアミノ基が還元糖と反応して起こる非酵素的褐変現象。発見者の名をとってメイラード反応と呼んでいるが、その生成物からメラノイジン反応(melanoidine reaction)ともいう。この反応は味噌、醤油、そのほかいろいろの食品の褐色の色、あるいは褐変現象に関係があるが、そのほか糖とアミノ酸を含む製剤や人体内でも起こる。(大木道則他「化学辞典」(東京化学同人 1994.10) p.1413より引用) ○タンパク質と還元糖の混合水溶液を加熱すると褐色化する反応。これはまずタンパク質中の遊離アミノ酸と還元糖のアルデヒド基が縮合し、さらに分解、重合反応を起こして含窒素褐色物質を生成すると考えられる。一般にアミンとカルボニル化合物の間に起こる褐色化現象もこの名で呼ばれ、メラノイジン反応ともいう。(日本化学会編「改訂2版 化学便覧 基礎編T」(丸善 1975.5) p.539より引用)

注2:「実験3」に関する補足説明
■香料原料について
 (1)アルデヒドC16   香料業界で「so-calledアルデヒド」と称する。イチゴの匂いがするためストロベリーアルデヒドとも呼ぶ。
       化学名:フェニルグリシド酸エチル(Ethyl 3-phenyl glycidate)(CAS 121-39-1 : 3-phenyloxiranecarboxylic acid ethyl ester )
 (2)ベルトール(Veltol)   別名Maltol。(3-Hydroxy-2-methyl-4H-pyran-4-one)(CAS 118-71-8 : hydroxymethylpyrone )
 (3)APV   (Ethyleneglycol monomethylether)(=2-Methoxy ethanol)(CAS 111-90-0 : 2-(2-Ethoxyethoxy)ethanol )
   ※(1)、(3)は異性体の混合物。
■香料原料の入手先  
   上記原料等が試薬として手に入りにくい場合は 山本香料株式会社 (大阪市中央区北久宝寺町1丁目3番6)
   ご担当:中原様(ypck01@gold.ocn.ne.jp)へご相談ください。


Science Teaching of Odor in Classroom Projects

ODAGIRI Makoto
Faculty of Education TOKOHA GAKUEN UNIVERSITY
E-MAIL:modagiri@tokoha-u.ac.jp


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