「化学教育ジャーナル(CEJ)」第5巻第1号(通巻8号)発行2001年7月28日/採録番号5-4/2001年4月 23日受理
URL = http://www.juen.ac.jp/scien/cssj/cejrnl.html
なんでも還元団
埼玉県春日部市立大増中学校 鈴木勝浩
YHE05110@nifty.com
1.はじめに
真っ黒な酸化銅をピカピカの銅に還元するものは,炭素粉末や水素だけではありません。炭素を含んでいる物は,私たちの身の回りにたくさんあります。
還元の授業の1時間目は,酸化銅を炭素粉末で還元する生徒実験を行います。2時間目は,銅線を使って,酸化銅を水素と砂糖で還元する生徒実験を行います。そして,3時間目に生徒にお菓子や飲み物を持ってこさせて,「なんでも還元団」ということで生徒実験をします。3時間目の授業をすることにより,生徒にとって,「還元」や「有機物」という言葉が実感をともなったものになります。
なお,「なんでも還元団」という名称と実験方法の一部は茨城県の宮内主斗氏より教えていただきました。
2.お菓子を使った還元の生徒実験
(1)準備するもの
- お菓子(チョコレ−ト,アメ,せんべい,甘納豆,クッキ−,かりんとう,他)
- 薬包紙(B4のわら半紙を4分の1に切ったものでもよい。)
- 加熱器具(アルコ−ルランプまたはガスバ−ナ−)
- 酸化銅(II)
- 試験管と試験管ばさみ
- 乳鉢と乳棒
- 乾電池,豆電球,導線
- 電子てんびん
- 濡れ雑巾
- マッチ
(2)方法
- 乳鉢に酸化銅を2.0g,お菓子を0.4gとり,乳棒でよくかき混ぜる。(図1,56KB)
- 乾いた試験管によく混ぜたものを薬包紙にとって入れる。
- 試験管ばさみを使って,試験管の口の近い方をはさみ,ガスバ−ナ−かアルコ−ルランプを使って加熱する。加熱するさい,試験管の口の方をやや下げる。(図2,35KB)
- 加熱をはじめると,混ぜたものの部分が真っ赤になって反応をはじめる。この時,煙や液体が出てくる。(約1分で反応は終わる。) 換気に気をつける。
- 反応が終わったら,濡れ雑巾の上に試験管をおく。そして,試験の下の方の部分を試験管ばさみではさみ直す。
- 試験管全体を加熱する。そして,試験管の内部に生じた液体を気化させる。(あとから取り出す銅がぬれないようにするためである。)
- もう1度,濡れ雑巾の上に試験管を置いて,試験管が冷えるまで待つ。(火傷にはくれぐれも注意する。)
- 試験管が十分に冷えたら,手で試験管をもって逆さにする。そして,机の上にしいた薬包紙の上でトントンとやって,できた銅を取り出す。固まっていたら,わりばしなどでついたりすると容易に取れる。(図3,39KB)
- 取り出した銅で,金属光沢を確認したり,電流が流れることを確認する。
(3)後かたづけ
この実験では,使用した試験管が汚れる。この汚れを落とすためには,10%水酸化ナトリウム水溶液を試験管の中に3日ほど入れておく。その後,試験管ブラシで洗うときれいになる。
3.飲み物を使った還元の生徒実験
(1)準備するもの
- 飲み物(ビ−ル,日本酒,チュ−ハイ,缶入りみそ汁,他)
- 加熱器具(アルコ−ルランプまたはガスバ−ナ−)
- るつぼばさみ
- 試験管と試験管立て
- 銅線(#18前後のもの)
(2)方法
- 試験管立てに試験管を立て,いろいろな液体を入れておく。液体の量は試験管に8分目とする。
- 約15cmに切った銅線をるつぼばさみにはさんで,真っ赤になるまで,ガスバ−ナ−かアルコ−ルランプで加熱する。
- 真っ赤になって酸化銅になった銅線を,るつぼばさみではさんだまま,すぐに液体の入った試験管の中に入れる。(真っ赤になったものを即座に入れるのがコツである。)
- 液体に入れると「プシュ−」という音とともに瞬時に銅に還元される。(試験管にめいっぱい液体を入れておくと,銅線を入れた瞬間,液が飛び出ることがあるので,液体は必ず試験管に8分目とする。)真っ赤になった部分が還元され,るつぼばさみではさんでいた方は黒色の酸化銅のままなので,1本の銅線で,酸化銅と銅を比べることができる。
- 元の銅線になったものをまた加熱して,そして,また液体の中に入れてというように,何度でも実験をすることができる。
4.おわりに
お菓子を使って酸化銅を還元すると,炭素粉末の時よりも十分に還元することができます。見た目でも,金属光沢を確認することができるので,生徒の驚きも大きいものがあります。
飲み物を使った還元の実験では,日本酒やビ−ルなどでは,はっきり還元を確認できるのですが,生徒の持ってきた物(炭酸飲料とかコ−ヒ−等)では,還元しづらいので,飲み物の場合は,教師が用意した方がいいかもしれません。
5.参考文献および注解
- 本間明信 「なんでも還元」『科学実験お楽しみ広場』
pp.98−99(新生出版,1992)
- 左巻健男 「酸化銅の還元」『たのしくわかる化学実験事典』
pp.207−208(東京書籍,1996)
- お菓子の成分にもいろいろあるのですが,仮に砂糖(ショ糖)の分子量から計算すると,酸化銅(II) 2.0gに対して砂糖0.35gを用いた場合に,過不足無い量的関係となります。そこで,お菓子0.4gでやってみたところ,試したもので良い結果を得ることができました。
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