遷移金属の抽出と計算機化学
吉 塚 和 治 (佐賀大学理工学部機能物質化学科)
改組により名称変更
1. はじめに
1.1 計算機化学(コンピュータケミストリー)発展史
最近のコンピュータの急速な高速化と低価格化に伴って、実験化学者が計算化学(コンピュータケミストリー)を日常使用できるようになってきている。コンピュータケミストリーとは、”分子とその物性、合成法などの化学に関する問題をコンピュータにより解決するアプローチ”と位置付けられ、分子情報データベースや実験解析などの化学情報管理分野と分子構造・物性の理論解析を行う分子力学や量子化学計算法と定量的構造活性(物性)相関法{QSA(P)R}の統計解析の計算機化学分野よりなる。このコンピュータケミストリーの歴史を辿ると図1のようになる。コンピュータケミストリーは1960年代後半から主として分子情報管理やIRやNMRスペクトル、あるいは元素分析や質量分析のデータを入力して分子構造を推定するエキスパートシステム型のデータベース的役割から始まった。その後量子化学計算等を用いた分子設計は1970年代後半から活発に行われるようになり、1985年以降はその主流となり、様々な用途を目的としたソフトウエアが上梓されてきた。計算機化学(コンピュテーショナルケミストリー)の中で、分子力学計算や分子軌道計算、分子動力学計算とともに分子設計に分類され、薬学や基礎化学、応用化学の分野で広く用いられ、かつ、今後の更なる応用が注目されている。