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遷移金属の抽出と計算機化学

               
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1.2 計算機化学分野の計算法

 図2に計算機化学分野で用いられている主な計算法を示した。この中で、分子力学(または、分子力場)計算法は、分子に簡単な古典力学モデルを当てはめる。すなわち、原子間の結合(伸縮、ねじれ)のエネルギーをフックのバネの法則を基本とした古典力学ポテンシャル関数、非結合原子間の相互作用を6/12型(あるいは6/9型)のvan der Waalsのポテンシャル関数で表して、分子の最安定構造や遷移状態における準安定構造を計算する方法である。しかしながら、分子力学計算で用いられるパラメータや立体エネルギーにはあまり物理的意味が無いが、分子構造を極めて速く、簡便に計算する方法としては優れている。一方、量子化学計算は、シュレディンガーの波動方程式を各原子について数値計算し、これを積分することによって分子構造、物性等を明らかにする方法である。計算法には波動方程式のハミルトニアンに経験的なパラメータを代入して解く半経験的分子軌道法やハミルトニアンを含めて全てを数値的に解く非経験的分子軌道法(一般にAb initio法と呼ばれる)とがある。半経験的分子軌道法は計算速度もかなり速く、最新のMOPAC93では、約500原子からなる分子まで計算することができるが、経験的パラメータが無い原子を含む分子は計算することができない。一方、Ab initio法は原理的は全ての原子について計算できることになるが、計算速度は極めて遅く、かつ、現在入手可能な最大容量のメモリーと記憶容量のコンピュータでも約100原子からなる分子の計算が限界である。分子動力学法は、前述の分子力学計算法の時間発展の計算法で、古典力学ポテンシャル関数とニュートンの運動方程式を連立して解き、経時変化を求める方法である。最近では、分子軌道計算法の時間発展型計算法である第1原理分子動力学法も開発されている。


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