「化学教育ジャーナル(CEJ)」第8巻第1号(通巻14号)発行2004年 9月30日/採録番号 8−3/2004年 8月 2日受理
URL = http://www.juen.ac.jp/scien/cssj/cejrnl.html


溶液の濃度計算と調製方法のインターネットによる自動サービス
−酢酸水溶液,塩酸,アンモニア水,水酸化ナトリウム水溶液−


芦田実,務台ひろみ,五十嵐真由美
埼玉大学 教育学部
〒338-8570 埼玉県さいたま市桜区下大久保255
E-mail: ashida@post.saitama-u.ac.jp


Automatic Services of Calculated Data and Preparation of Solutions
by Using Internet - Acetic Acid Aqueous Solution, Hydrochloric
Acid, Ammonia Water, and Sodium Hydroxide Aqueous Solution -


Minoru Ashida*, Hiromi Mutai, and Mayumi Igarashi
Faculty of Education, Saitama University
255 Shimo-ohkubo, Sakura-ku, Saitama, Saitama, 338-8570 Japan

1.はじめに
 本研究室では,インターネットを利用して学外との双方向の交流を目指し,利用者の立場に立ってそのニーズに応えるためのホームページ[文献1]を試作している.そのために,質問箱を開設したり,回帰分析などの計算・作図サービス[文献2]や溶液の濃度計算と調製方法のサービス[文献3]を開始している.質問箱は最近2ヶ月間で閲覧数(約5000回)や質問数(約40件)が急増して困り果てているが,その他のサービスは利用者が少ない.そこで,多くの人に知ってもらい,また利用してもらうために,本報告で紹介することにした.
 今,小学校では理科離れが進んでいる.理科(化学)の面白さは実験を通して伝えられることが多いと思われる.そこで,理科離れを少しでも減らすために,小学校で少しでも多く理科(化学)実験を行ってもらうために,化学系実験の一番の基礎である水溶液の作り方(濃度計算と調製方法)[文献3]の自動サービスを開始している.コンピュータに弱い人でも何の予備知識もなしに,いつでも必要なときに使用できる.さらにダウンロードサービスも開始しているので,圧縮ファイルをダウンロードして解凍すればこのプログラムはパソコンの中だけ(オフライン)でも実行できる.前報[文献3]では,塩化ナトリウム水溶液について報告し,ホームページですでにサービスを開始している.本報告では,次に利用度の高いと思われる酢酸水溶液,塩酸,アンモニア水,水酸化ナトリウム水溶液を開発し,ホームページで公開することにした.

2.利用者の操作方法
 ここでは,酢酸水溶液の調製方法を中心に説明する。「溶液の作り方(濃度計算と調製方法)」のメニューから「酢酸水溶液」をクリックすると,最初の画面(図1)が表示される.同様に塩酸,アンモニア水,水酸化ナトリウム水溶液を選択した場合にも,最初の画面(図2図3図4)が表示される(操作方法は,以下の酢酸水溶液の場合とほぼ同様である).酢酸水溶液では,一番上の5つのテキストボックスとその真下のボタンが対応している.酢酸原液の体積と希釈水の体積から水溶液の濃度を計算する場合や,濃度と水溶液の体積から水溶液を調製するために必要な酢酸原液と希釈水の体積を求める場合には,2つのテキストボックスに数値(例えば,百分率濃度と希釈後の溶液体積)を半角文字で入力する.そして,どれか空のテキストボックスの真下のボタン(例えば,酢酸体積)を押す.このとき,押したボタンの真上のテキストボックスに数値が入力されていても,入力されていないものとして扱われる.プログラムが自動的に空のテキストボックス全ての数値を計算して,緑色の文字で表示する(図5).例えば,5.432E-1や1.234e5のような指数形式での入力も可能である.ただし,半角E(またはe)の後ろに半角空白を入れるとエラーになる.
 このプログラムは,濃度の計算方法を全く知らない人が使用することを想定しているので,でたらめに操作しても可能な限り動くように考慮している.その1つとして,上述のように2つのテキストボックスに数値を入力すれば計算できるわけだが,3つ以上のテキストボックスに数値を入力してもプログラムは動くようにしている.ただし,計算は2つの数値を採用して行う.そのときの優先順位を表1に示す(その他の試薬でも優先順位は酢酸の場合と同様である).3つ以上の数値を入力する場合には,採用されなかった数値が計算により変化しない(すなわち,でたらめな数値ではない)ことが望ましい.再び計算する前に,全部の数値または計算値のみを右端のボタンで消去できる.なお,数値を消去せずに,前回の数値の1つを変更してボタンを押しても,変更した値が採用の優先順位によって元に戻ってしまうことがある.
 酢酸では100%(17.42 mol/)を超過することは原理的にありえないので,超過した場合には強制的に100%の値に変更し,赤字で警告を表示する(図6).他の試薬では,市販品濃度や溶解度を超過した場合には,赤字で警告を表示するが,計算はできるようにしている(図省略).濃度を換算する場合には,百分率濃度かモル濃度のうち,どちらか一方のテキストボックスに数値を入力する.そして,数値を入れなかったほうのテキストボックスの真下のボタンを押す(図7).その他,操作を間違えて計算できないときは,エラーが表示される(図8).計算が終了し5つのテキストボックスに数値が入っている状態で,5つのボタンを適当に押すと,数値がわずかに変化する.これは,表示用に数値を四捨五入したときの誤差と採用の優先順位による計算順序・方法の変化による誤差が原因である.

3.水溶液の調製方法と注意事項
 ホームページの画面に,Java Appletのプログラムだけでなく,以下のような具体的な調整方法と安全等のための注意事項を載せている.また,主な実験器具の写真と使用方法等も載せている.

3.1 酢酸水溶液図1
 酢酸水溶液を調製するには,作成したい容量がはかれるメスシリンダー(図9,たとえば350mを作成するなら500m)で蒸留水をはかりとり,ビーカーに移す.別のメスシリンダー(図9)で酢酸をはかりとり,蒸留水の入ったビーカーに少しずつよくかき混ぜながら加えていく.必要ならば試薬ビンに移して保管する.試薬名,濃度,作成日,作成者などを書いたラベルを付ける.また,必要な器具は,前もって洗浄し乾燥しておく.
 酢酸のビンの中にはガスが充満していて,フタを開けるときにガスが噴き出すかもしれない.ガスや飛沫が目に入らないように注意する.また,刺激臭があるため,吸わないように換気の良い所で取り扱う.酢酸が目に入ったり,皮膚についたら直ぐに水で洗い流す.市販品の濃度は100%に近い値である.正確な濃度が必要な場合には,濃度がわかっている塩基で滴定して,正確な濃度を決定する.

3.2 塩酸図2
 塩酸を調製するには,作成したい容量がはかれるメスシリンダー(図9たとえば350 mを作成するなら500 m)で蒸留水をはかりとり,ビーカーに移す.別のメスシリンダー(図9)で濃塩酸をはかりとり,蒸留水の入ったビーカーに少しずつよくかき混ぜながら加えていく.必要ならば試薬ビンに移して保管する.試薬名,濃度,作成日,作成者などを書いたラベルを付ける.また,必要な器具は,前もって洗浄し乾燥しておく.
 濃塩酸のビンの中にはガスが充満していて,フタを開けるときにガスが噴き出すので,ガスや飛沫が目に入らないように注意する.また,ガスには毒性があり,刺激臭があるため,吸わないように換気の良い所で取り扱う.濃塩酸が目に入ったり,皮膚についたら直ぐに水で洗い流す.濃塩酸を水で希釈するときは,発熱するので注意する.溶液の体積を調整する場合には,冷えてから行う.市販品の濃度は推定値で,飽和に近い値である.正確な濃度が必要な場合には,濃度がわかっている塩基で滴定して,正確な濃度を決定する.

3.3 アンモニア水図3
 アンモニア水溶液を調製するには,作成したい容量がはかれるメスシリンダー(図9,たとえば350 mを作成するなら500 m)で蒸留水をはかりとり,ビーカーに移す.別のメスシリンダー(図9)で濃アンモニア水をはかりとり,蒸留水の入ったビーカーに少しずつよくかき混ぜながら加えていく.必要ならば試薬ビンに移して保管する.試薬名,濃度,作成日,作成者などを書いたラベルを付ける.また,必要な器具は,前もって洗浄し乾燥しておく.
 濃アンモニア水のビンの中にはアンモニアのガスが充満していて,フタを開けるときにガスが噴き出すので,ガスや飛沫が目に入らないように注意する.また,ガスには毒性があり,強烈な臭いがあるため,吸わないように換気の良い所で取り扱う.濃アンモニア水が目に入ったり,皮膚についたら直ぐに水で洗い流す.市販品の濃度は推定値で,飽和に近い値である.正確な濃度が必要な場合には,濃度がわかっている酸で滴定して,正確な濃度を決定する.

3.4 水酸化ナトリウム水溶液図4
 必要な器具は,前もって洗浄し乾燥しておく.
◆多量の溶液(約500 m以上)を作る場合
@作成する容量がはかれるメスシリンダー(図9,例えば,500 m作成するなら500 mまたは1000m)で蒸留水をはかりとり,半分は大きめのビーカーに移し,残りはメスシリンダーに残しておく.
A天秤(図10)を用いて別のビーカーに水酸化ナトリウムをはかりとり,すぐに@のビーカーの蒸留水に加えてよくかき混ぜる.Aのビーカーの底に付着した水酸化ナトリウムは,メスシリンダーの蒸留水を加えて溶かした後に@のビーカーに移す.
◆少量の溶液(約500 m以下)を作る場合
Bメスシリンダー(図9.例えば100 m作成するなら100 mまたは200 m)で蒸留水をはかりとる.
C天秤(図10)を用いてビーカーに水酸化ナトリウムをはかりとり,すぐにBではかりとった蒸留水を加えてよくかき混ぜる.
D必要ならば,試薬ビンに移して保管する.試薬名,濃度,作成日,作成者などを書いたラベルを貼り付ける.
水酸化ナトリウムの固体(粒)には潮解性があり,空気中の湿気を吸収してベトベトになる.天秤を使うときは粒をこぼしても大丈夫なように,天秤の皿とビーカーの間に紙(薬包紙など)を敷く.質量をはかるときは手早く行う.残りの水酸化ナトリウムの固体は,直ぐにビンのふたをしっかり閉めて保管する.水酸化ナトリウムを水で溶かすときは,非常に発熱して湯気が出るので注意する.湯気(水酸化ナトリウム水溶液)には毒性があり,刺激臭があるので,湯気を吸わないように換気の良い所で取り扱う.溶液の体積を調整する場合には,冷えてから行う.水酸化ナトリウム水溶液が目に入ったり,皮膚についたら直ぐに水で洗い流す.水酸化ナトリウムの固体は粒が大きいので,計算値の質量をぴったりはかり取ることはできない.また,水酸化ナトリウム水溶液は保管中に空気中の二酸化炭素を吸収し,濃度が次第に減少していく.そこで,正確な濃度が必要な場合には,使用する直前に濃度がわかっている酸で滴定して,正確な濃度を決定する.天秤は慎重に取り扱い,薬品をこぼしたらすぐに掃除する.はかれる範囲は天秤によって異なる.最大秤量を超過しないように注意する.

4.濃度などの計算方法
 ホームページの画面に,以下のような計算方法の解説を載せている.ただし,4.3と4.5についてはどこまで意味があるか分からないので,ホームページには載せていない.

4.1 酢酸水溶液図1
 酢酸原液の体積と質量をV(m)とM(g),希釈水の体積と質量をV(m)とM(g),溶液の質量と体積をM(g)とV(m),溶液の密度をD(g/m),質量百分率濃度をW(%),モル濃度をC(mol/),希釈後の溶液体積/希釈水体積をQとする.さらに,酢酸の式量をF(g/mol),酢酸原液の密度をD(g/m)とすると,次式のような関係が成立する[文献4,5].

  M=V, M=V, W=100M/M, M=M+M=V+V=VD,

  C=1000M/FV, Q=V/V, 1=1000 m

既知の値から未知の値を求めるには,これらの式を連立させて解く.濃度から密度を求めたり,溶液体積/希釈水体積から濃度を求めるときは表2文献6]を用いて直線的に内挿する.なお,酢酸濃度が100%のときの溶液体積/希釈水体積の値は無限大になるはずだが,計算するときに困るので,酢酸濃度99.99%のときの値10000で代用している.

4.2 塩酸,アンモニア水図2図3))
 濃塩酸(塩化水素の水溶液)または濃アンモニア水の体積をV(m),それに溶けている塩化水素またはアンモニアの質量をM(g),希釈水の体積をV(m),水の全部の質量をM(g),溶液の質量と体積をM(g)とV(m),溶液の密度をD(g/m),質量百分率濃度をW(%),モル濃度をC(mol/),希釈後の溶液体積/希釈水体積をQとする.さらに,塩化水素またはアンモニアの式量をF(g/mol),濃塩酸または濃アンモニア水の質量百分率濃度と密度をW(%)とD(g/m)とすると,次式のような関係が成立する[文献4,5].

  M=V/100, M=V+V(100−W)/100, W=100M/M,

  M=M+M=V+V=VD, C=1000M/FV, Q=V/V, 1=1000 m

既知の値から未知の値を求めるには,これらの式を連立させて解く.濃度から密度を求めたり,溶液体積/希釈水体積から濃度を求めるときは表3または表4文献6]を使う(後述の4.3を参照).塩酸濃度が37.3%およびアンモニア水濃度が28.3%のときの溶液体積/希釈水体積の値は,酢酸の場合と同様の理由で非常に大きい値(10000,6000)にしている.また,濃度0%のときの密度は1.00g/mで近似している.

4.3 数値表(文献値)と市販品濃度の間隔が大きい場合の内挿方法(塩酸,アンモニア水)
 市販品(濃い水溶液)の体積をV(m),溶けている化学物質の質量をM(g),希釈水の体積をV(m),水の全部の質量をM(g),希釈後の溶液の質量と体積をM(g)とV(m),溶液の密度をD(g/m),質量百分率濃度をW(%),モル濃度をC(mol/),希釈後の溶液体積/希釈水体積をQとする.さらに,化学物質の式量をF(g/mol),数値表に掲載されている質量百分率濃度の最大値とその密度をW(%)とD(g/m),市販品の質量百分率濃度と密度をW(%)とD(g/m)とすると,

  M=V/100, M=V+V(100−W)/100, W=100M/M,

  M=M+M=V+V=VD, C=1000M/FV, Q=V/V, 1=1000 m

簡単のために,密度が質量百分率に比例していると仮定すると,

  D=PW+P, P≡(D−D)/(W−W), P=D−P

  V=VD−V=V(W−W)(PW+P)/Wより

  W=P+(P−P/Q)0.5, P=(P−P)/(2P),

  P=D/(4P), P=W/P

  C=10D(D−P)/(FP)より

  D=P+(P+PC)0.5, P=P/2, P=P, P=FP/10

以上の式より,溶液の密度D,濃塩酸の体積V,希釈水の体積V,溶液体積/希釈水体積Qの質量百分率濃度Wによる変化を求めて図11に示す.QとWは直線関係ではなく,飽和濃度37.3%においてQが無限大になっている.特に,数値表の間隔が大きいW=30%とW=37.3%の間では,直線的に内挿すると誤差が大きくなることが分かる.これは以前,計算が終了した後に5つのボタンをランダムに押しまくったときに,数値が変化していった原因である.飽和濃度(W=37.3%)以上で希釈水の体積Vが負の値になっており(図は省略するが,画面に赤字で警告を表示),濃塩酸をさらに濃縮しない限りこのような濃度の溶液は作れないことを表している.普通の調製方法ではありえないが,このプログラムは高校以上の化学や濃度計算を全く知らない人が使用することを考慮しているので,このような条件の数値をうっかり入力することもあろうかと考えて,計算(全て見かけの値)だけはできるようにしておいた.また,エラーが表示されたとき,どの程度の数値を入力すれば正常な計算ができるのか,そのような人には見かけの計算値が重要なヒントになると思われる.しかし,W=100%では完全に塩化水素の気体になってしまうので,少なくともW=50%を超えたら計算結果そのものに意味がなくなると思われる.なお,アンモニア水の図は省略するが,飽和濃度が28.3%になるだけで,曲線の変化傾向は(図11)の塩酸の場合と同様である.

4.4 水酸化ナトリウム水溶液図4
 水酸化ナトリウムの質量をM(g),水の量をM(gまたはm),溶液の質量と体積をM(g)とV(m),溶液の密度をD(g/m),質量百分率濃度をW(%),モル濃度をC(mol/),溶液体積/水量の比をR,水酸化ナトリウムの式量をF(g/mol)とする.これらの間に,次式のような関係が成立する[文献4,5].

  W=100M/M, M=M+M=VD, C=1000M/FV, R=V/M

  1=1000 m

既知の値から未知の値を求めるには,これらの式を連立させて解く.濃度から密度を求めたり,溶液体積/水量の比から濃度を求めるときは表5文献6]を用いて直線的に内挿する.なお,溶液体積/水量の比Rには,質量百分率濃度W≒1%に極大値が,W≒5%に極小値が存在する.したがって,溶液の体積Vと水の量Mに数値を入力して,他の値を計算する場合には,0.998891≦R≦1.0005954(すなわち,0%≦W≦8.63%)の範囲で,2〜3個の解が得られることがある(図12).[次の解答]のボタンをクリックすれば,これらの解を順番に表示することができる.すべての解答が出終わると,[解答終了]のボタンが表示される.

4.5 飽和濃度を超過した場合の計算方法(水酸化ナトリウム水溶液)
 溶解しなかった固体が飽和水溶液中に沈殿していると仮定する.
 飽和溶液中の試薬の質量をMa2(g),水の量をM(gまたはm),飽和溶液の体積をV(m),密度をD(g/m),質量百分率濃度をW(%)とする.
 沈殿している固体の質量をMa3(g),体積をV(m),密度をD(g/m)とする.
飽和溶液+固体の見かけの質量をM(g),体積をV(m),密度をD(g/m),質量百分率濃度をW(%),モル濃度をC(mol/),溶液体積/水量をRとすると,

表6 飽和溶液と固体に関する変数の定義
物理量(単位) 飽和溶液 固体 飽和溶液+固体の見かけの値
試薬の質量(g) a2 a3 =Ma2+Ma3
水の量(g,m)    
質量の合計(g) a2+M   M=Ma2+Ma3+M
体積(m) V=V+V
密度(g/m)
質量百分率濃度(%)  
モル濃度(mol/)    
溶液体積/水量    

  W=100Ma2/(Ma2+M), Ma2+M=V, Ma3=V, M=Ma2+Ma3

  V=V+V, W=100M/M, M=Ma2+Ma3+M=VD, C=1000M/FV, R=V/M

以上の式より

  Ma2=MW(100−W)/{100(100−W)}, Ma3=M(W−W)/(100−W),

  M=M(100−W)/100, D=P/(P−W), P≡D(100−W)/(D−D), 

  P≡(100D−W)/(D−D), W=P(R−P)/(R−P), P=100,

  P≡P/P, P≡100/P, D=P+PC, P≡1/P, P≡F/(10P

これらの式より,溶液の密度D,水酸化ナトリウムの質量M,希釈水の体積M,溶液体積/希釈水体積Rの質量百分率濃度Wによる変化を求めて図13に示す.飽和濃度W=52.2%を超えた範囲では,溶けきれなくなった固体が沈んでいるので,計算値は全て見かけの値である(赤字で警告を表示し,上の4.3と同様の理由で計算だけはできるようにしておいた).特に,この範囲ではRとWは直線関係ではない.しかし,前報の塩化ナトリウム水溶液[文献3]では最初にこれを直線的に外挿していたので,計算終了後に5つのボタンをランダムに押しまくったときに数値が変化する原因となっていた.現在のホームページでは,既に上で述べた方法でプログラムを修正している.W=100%においては水酸化ナトリウムの固体のみが存在し,水が存在しないことになるのでRが無限大になっている.なお,前報の塩化ナトリウム水溶液[文献3]でも飽和濃度W=26.4%が違うだけで,曲線の変化傾向は同様である.

5.使用したソフトウェア
 使用したOSはMicrosoft社のWindows 98,2000 Professional,ME,XP home editionである.Java Appletは多くの書籍[文献7〜12]を参考にして,Borland社のJBuilder 6 Professionalで作成し,フリーソフトウェアFFFTP 1.88[文献13]でサーバーにアップロードした.HTMLファイルはIBM社のホームページ・ビルダー2001[文献14,15],またはマクロメディア(株)のDreamweaver MX[文献16]で編集・作成した.実行形式のバイナリーファイルの編集にはフリーソフトウェアStirling 1.31[文献17]を使用した.
 その他,ファイルの構成やプログラムの開発方法については,前報[文献3]とほぼ同じなので省略する.

6.おわりに
 教育学部のサーバーだけでなく,学外のサーバーにも濃度計算と調製方法のプログラムを載せてサービスを開始した[文献1].学校の授業の準備や自由研究等でも利用できると思われる.今後はさらに,計算できる(水)溶液の種類を増やし,少しずつサービスを充実していく.

参考文献など(URLは全て2004年8月2日時点のものです)
[文献1]トップページ http://www.e-sensei.ne.jp/~ashida/index.htm
および http://www1.edu.saitama-u.ac.jp/users/ashida/index.htm
および http://www.saitama-u.ac.jp/ashida/index.htm
[文献2] 芦田実ほか『インターネットを活用した回帰分析と作図の自動サービス −Excel形式−』化学教育ジャーナル(CEJ),第7巻第1号(通巻12号),採録番号7-4(2003)
[文献3] 芦田実ほか『溶液の濃度計算と調製方法のインターネットによる自動サービス −塩化ナトリウム水溶液−』化学教育ジャーナル(CEJ),第7巻第1号(通巻12号),採録番号7-5(2003)
[文献4] 中川徹夫『2成分系溶液の濃度の相互変換公式』理科の教育,通巻599号,51(6),406(2002)
[文献5] 中川徹夫『水溶液の調製に有用な式』理科の教育,通巻603号,51(10),696(2002)
[文献6] 日本化学会編『化学便覧基礎編』丸善(株)
[文献7] 高橋和也ほか『Java逆引き大全500の極意』(株)秀和システム
[文献8] 田中秀治『Jbuilder5で入門!Javaプログラミング』ソーテック社
[文献9] 松浦健一郎,司ゆき『はじめてのJBuilder6』ソフトバンク(株)
[文献10] 赤間世紀『Java2による数値計算』技報堂出版(株)
[文献11] 青野雅樹『Javaで学ぶコンピュータグラフィックス』(株)オーム社
[文献12] 中山茂『Java2グラフィックスプログラミング入門』技報堂出版(株)
[文献13] http://www2.biglobe.ne.jp/~sota/
[文献14] 『ホームページ・ビルダー2001ユーザーズ・ガイド』日本アイ・ビー・エム(株)
[文献15] アンク『HTMLタグ辞典』翔泳社
[文献16] 『Dreamweaver MXファーストステップガイド』マクロメディア(株)
[文献17] http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se079072.html          元の本文位置に戻る

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