「化学教育ジャーナル (CEJ)」第8巻第1号(通巻14号)発行2004年 9月30日/採録番号 8-2/2004年 5月14日受理
URL = http://www.juen.ac.jp/scien/cssj/cejrnl.html

中学校での水溶液単元の指導上の工夫とその実践

琉球大学教育学部 吉田 安規良
whelk@edu.u-ryukyu.ac.jp

[要約]

  現行学習指導要領下での1回目の教科書検定に合格した教科書を見比べると,中1で学習する「水溶液の性質」の単元の水溶液中で起きる中和については,(水の生成も伴うにも関わらず)塩の生成だけを強調したものが少なくない。そのことは,「中和によって,酸とアルカリが互いの性質を打ち消し合って,塩とともに水も生成する」という中和の本質を理解することを困難にしている。水の生成を確認する実験教材には先行事例があるが,特別な試薬や器具を用いなくてはならないため実際の授業に導入しにくかったり,生徒の実験技能では失敗しやすい教材であるため思ったほど学習効果が現れないなど問題点があった。本報告では,特別な試薬や器具を用いずに,中学生程度の実験技能で失敗することなく「水の生成」という事実を安価で簡便に無理なく確認させる実験方法を開発した。それは水の生成を確認する指示薬として無水塩化コバルト粉末を用い,氷酢酸と固体の水酸化ナトリウムの中和反応を用いた実験教材である。これを授業に取り入れた時の生徒の様子は,1人で簡単に取り組むことができ,授業に参加した全員が失敗することなく,すぐに水の生成を確認することができた実験だったため,実験の準備から全員が意欲的に授業に参加していた。また,結果や意見の交流や授業のまとめもスムーズに行うことができ,学習内容の理解に効果があった。

1.はじめに

 2002年4月から実施された学習指導要領は,「基礎・基本の充実」をスローガンに掲げているが,「学習内容の3割削減」に伴って多くの単元の履修学年変更もなされた[1,2]。この履修学年変更は,「難しい」と思われる内容・概念の(やや安易な)「先送り」であったために,学習内容及びその配列等に科学的な必然性・論理性を欠くことになり,教育上大きな支障をもたらした。
 このような状況下で,学校教育現場では色々な指導上の対策が求められることになるが,履修学年の変更をうけた教材の一つに「酸・アルカリの定義と中和に関する学習」がある。以下,「水溶液の性質」の単元の,とりわけ中和の教材をとりあげ,重要な事項の簡単な実験指導法と実践結果について報告する。
 一般に,酸・アルカリの定義は,化学研究の進歩に伴って,水溶液に対するものから他の状態系でも適応できるように拡張されたため,学習者のレディネスやレベルあるいは研究対象となる領域によって様々なものがある。
 今までは,リトマスやBTBの呈色による酸・アルカリの定義と中和の初歩を小6で学習し,続いて中1の「水溶液の性質」の単元で,溶液の均一性やパーセント濃度を学習していた。最後に中3で,イオンの学習とともに,酸・アルカリのアレニウスの定義と中和を学んでいた[3,4]
 しかしながら,現行学習指導要領になり,中3で学習していたイオンの部分はそっくり高等学校へ移行された。Table 1 は水溶液の性質の部分の新旧指導要領の目標を比較したものである[2,4]。高等学校に移行せず引き続き中学校での履修となった酸・アルカリの定義と中和については,中3の学習内容が中1に変更されたのではなく,小6の内容がそのまま中1に移行したことがわかる。

Table 1 新旧学習指導要領における水溶液の単元の内容比較

現行中1“身の回りの物質−水溶液”についての内容[2]
 酸,アルカリを用いた実験を行い,酸・アルカリの性質を見いだすとともに酸とアルカリを混ぜると中和して塩が生成することを見いだすこと。

旧小6“物質とエネルギー−水溶液の性質”の内容[4]
 ●水溶液には酸性,アルカリ性及び中性のものがあること
 ●酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液を混ぜあわせると別のものができること

 さらに解説書には,この部分についてのねらいがTable 2 のように記されている[5]

Table 2 酸,アルカリと中和のねらい

 いくつかの酸性やアルカリ性の水溶液を用いた観察,実験を行い,酸,アルカリに共通した性質を見いださせるとともに,酸とアルカリを混ぜると中和してそれぞれの性質がうち消されること及び中和で塩が生成することを見いださせることがねらいである。

 一般に中和とは,酸とアルカリが互いの性質をうち消しあうことを意味する。酸とアルカリの定義を拡張し,酸と金属との反応までも中和とすれば水が生成せず塩のみが生成する[6]。また,ブレンステッドの酸と塩基の定義によれば,気体の塩化水素とアンモニアもそれぞれ酸と塩基である。これらの気体同士の中和でも塩のみが生成する。しかし,中学校で学習する酸,アルカリはアレニウスの定義に従っているので中和の際に必ず水が生成する。塩の生成は,例えば硫酸と水酸化バリウム水溶液のように難溶性塩が生成する反応か,水を蒸発させて観察することで容易に確かめることができる。しかし水については,教科書に記載もなく,もともと溶媒として多量の水が存在しているので,生徒が水の生成を実感として理解することはできないであろう[7]。しかし水の生成を実際に確認することをせずに,教師の説明や教科書の記述のみで理解するようなことになれば,せっかくの中和の学習内容が実感を伴わないものになってしまう。また,中2で化学反応式を学習する際に,既習の化学変化を例題や問題演習に利用している。そこで,塩酸と水酸化ナトリウムの化学反応式を考える際に,塩の生成だけを理解しているよりも水の生成まで理解していると,「化学変化では原子の組み合わせが変わる」という化学変化の本質を理解して化学反応式をつくることに役立つ。化学反応式の学習は生徒が理解に苦労することが多いので,反応生成物を生徒が知っていることは学習を効果的に進めていくのに役立つ。こういった学習事項のつながりなども考えると中和における水の生成を塩の生成と同様に簡単に確かめる実験教材が必要となってくる。

2.中学校で簡単に水の生成を確かめる方法

 一般に学校現場では,特別な政策が実施されない限り,学習指導要領の改訂の度に新カリキュラムに必要な教材・試薬購入の予算は配当されない。筆者がかつて勤めていた地域では児童生徒1人あたりの教育費として10万〜20万円程度が予算計上されている[8−12]。従って,学校現場では,各教科に配分された少ない予算(と場合によっては残存する教材・試薬)をやりくりしながらの授業実践が要求される。以下の報告も筆者がそのような状況下の公立中学校で,理科室に常備してある試薬や器具を組み合わせながら工夫した実験教材と,実際の授業へ適用した検証結果である。
 まず,中和で生成する水を調べるにはどのような方法が適切なのかを考えるため,従来の教科書を参考にした。それには,硫酸銅の色の変化を利用するものが掲載されていた。即ち,無水硫酸銅は白色であるが,水と出合うと青色を示すことを利用したものである[13,14]。他の方法としては,反応に用いる酸をコハク酸やステアリン酸などの固体の有機酸に替えた例,及び水の生成の確認に“塩化コバルト紙”や“塩化コバルトを含んだシリカゲル”を用いる方法もあった[15−17]。しかし,固体の有機酸は生徒にとってあまり身近に感じられず,水溶液の性質の学習に水に溶けにくい酸を用いるのは適切でない。また,シクロヘキサンなどの有機溶媒中での実験は中学校では不適当であろう[16]。さらに,コハク酸を使った実験中の事故例による行政側からの指導等々,固体の有機酸を用いた中和の実験は不適切であると考える。
 そこで,はじめに前述の硫酸銅無水物から水和物への色の変化を利用して水の生成の確認実験[13]を実践し,問題点を検証した。実験方法とその結果をTable 3 に示す。

Table 3 硫酸銅による水の生成の確認実験

(1)硫酸銅5水和物を少量試験管に取り,一度加熱し,無水硫酸銅を調製した。

(2)1本の試験管にはそのまま純水を注ぎ,色が変化することを確認した[Fig.1左]

(3)同じようにエタノール(非水溶媒)を注いでも,色が変化しないことも確認した[Fig.1中]

(4)3本目の試験管には,氷酢酸を注ぐ。氷酢酸中には,水が含まれていないため,硫酸銅は変色しないことを確認した[Fig.1右]

(5)エタノールの入った試験管に固体の水酸化ナトリウムを入れても硫酸銅は変化しない[Fig.2中]が,氷酢酸の試験管に固体の水酸化ナトリウムを1粒入れると,たちまち溶液は青色に呈色し,水の生成を確認できた[Fig.2右]

 筆者は中3ならびに中1を担当した過去5年間にわたり,この実験教材を生徒に体験させた。しかし,この実験だけからは,生徒全員が水の生成を確認することは困難であった。この実験では,あらかじめ硫酸銅5水和物から無水物を調製することが必要となるが[Fig.3],試験管中で加熱しても生徒の実験技能では,試験管内で発生した水の逆流により“無水”硫酸銅が得られない事が多かった[Fig.4]
 より簡便な方法として,無水硫酸銅をあらかじめ購入するとしても,中学校の理科室の保管状況では,自然に水和物に変化する。また,教師が硫酸銅の無水物をあらかじめ調製しても,「青い硫酸銅から水が抜けると色が白くなる」という調製段階の観察を欠いては,その後の「水と接触して青くなる,即ち水の生成を色の変化で確かめる」というシナリオが成立しない。そのため,失敗するリスクがあっても試験管で個々の生徒に加熱させる方法をとったが,生徒1人1人が自分の手ですべての実験作業を行うことで,“傍観者”の発生を防ぐことにもなり,結局高い教育効果が得られた。
 次に,硫酸銅の代わりに塩化コバルト紙をそのまま氷酢酸の中に入れて実験した。しかし,水酸化ナトリウムを加えても,試験管の中の塩化コバルト紙は赤くならず,水の生成を確認することはできなかった。そこで,「無水塩化コバルト」の固体を使用することを考えた。実際に,上述の実験を塩化コバルトでも実施できると書かれた文献もあるが[18],具体的な方法や,分量まで記載した教師向けのマニュアルを見つけることはできなかった。そこで以下に筆者が実験した結果をもとに,生徒の技能で実験可能な方法を整理した。
 まず,薬さじの小さい方(あるいはスパーテル)で,すり切り1/2杯程度の大雑把な秤量で無水塩化コバルトを3本の試験管に入れた。3本の試験管に純水[Fig.5左],エタノール[Fig.5中],氷酢酸[Fig.5右]をそれぞれ約5mL注ぐ。まず,塩化コバルトは水と反応すると赤色を呈色することがわかる。エタノールと氷酢酸だけでは変化しないことを確認する。次に,氷酢酸の入っている試験管に1粒の固体の水酸化ナトリウムを入れると青色を示していた溶液が赤色へ変化した[Fig.6右]。同様に水酸化ナトリウムを入れても,エタノールでは変化しないことを確認する。対照となる純水との比較によって[Fig.6左],呈色に多少の違いはあるが,水の存在により “赤色”に変化することは十分確認できた。

3.実際の授業実践例

 これらの実験結果を組み合わせて,実際に筆者が実施した水溶液の性質の単元で中和を学習するための学習展開例を提示する(Table 4)。

Table 4 中和の学習展開例

段階

学習内容

具体的な学習活動

水溶液の性質と酸・アルカリ

(1)酸(塩酸),アルカリ(水酸化ナトリウム)の水溶液の両方に「アルミニウム」(家庭用アルミ箔)を入れたものを提示する[19]

(2)2つの水溶液の違いを調べる

(3)(2)の結果を比較し,酸とアルカリの違いをまとめる

(4)他の水溶液の性質を調べて,酸とアルカリに分類する

中和

(1)1−(1)の水溶液を混合したときの変化を予想し,中和について考える

(2)1−(1)の水溶液を実際に混合し,中和についての興味を抱かせる

(3)塩化コバルトを用い,氷酢酸+水酸化ナトリウムの反応を行い,水の生成を確認する

(4)酸(塩酸),アルカリ(水酸化ナトリウム)の中和を行い,中和では水以外に塩が生成することを確認する

(5)他の中和でも塩が生成することも確認する

学習のまとめ

(1)酸,アルカリの定義や中和についてまとめる

 この学習過程は第1段階として,酸,アルカリの定義を学習する際に,「見た目は同じでも,実は性質が異なる」事例の観察を学習の動機付けに利用した。塩酸も水酸化ナトリウム水溶液も5〜10%の濃度では,色や透明度は同じに見えるため,違いを見ただけで判断することは難しい[20]。そこに動機付けの実験として,アルミニウムを2つの水溶液の両方に入れて,水素が発生している状況を観察する。
 現在の教科書では1社[21]だけがこのアイディアを発問教材として利用しているが,生徒向け実験教材としては取り上げていない。これは,両性金属であるアルミニウムの性質を利用したものであり,既習事項である「金属は酸にしか反応しない」という先行概念との整合性やアルカリ溶液中での両性金属の反応機構が酸との反応より難しいという問題点もあるが,酸とアルカリの共通の化学的性質を観察させるという点で,優れた実験教材となった。塩酸,水酸化ナトリウム水溶液の両方から同じ水素が発生している状況を実際に観察し,その2つの水溶液の性質をリトマス紙やBTB溶液などで確かめ,酸とアルカリについての学習を行った。次に第2段階として,最初に示した2つの水溶液を混ぜるとどうなるかを予想させた。多くの生徒は,「変化しないでそのまま水素を発生させる」か「発生する水素の量が増える」と予想した。実際に反応させると,中和によって酸とアルカリの性質がうち消しあい,濃度が低くなるので,生徒は水素の発生量が目に見えて減っていくことを理解した。この時,あらかじめ2つの試験管にBTB溶液を入れておき,混ぜ合わせる分量をあえて指示しなかった。その結果,生徒によって混ぜ合わせた後の水溶液の性質が異なる結果を得た。これが「中和が起こると(量に依存せず)最後は必ず中性になる」という誤った理解に導かないために重要な過程となる。
 次に,いよいよ酢酸と水酸化ナトリウムの中和を利用して,水の生成について調べる実験を行った。生徒は,「食酢」が酸性であることを生活経験上すでに知っているので,氷酢酸が酸であることを追試する必要はない。塩化コバルトによる水の生成を確かめる実験教材は,試験管1本でできる実験であり,生徒全員が自分の手で実験を行うことができる。また,失敗することがなく全員が水の生成を確認することができるので,結果をまとめる時に,自分の手で結果(=正答)を得られた満足感も得ることができ,全員が結果を暗記するようなことなく,実感を伴って学習内容を理解することができた。
 その後,塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和を行い,中性〜弱酸性の水溶液を蒸発させ,塩化ナトリウムの結晶だけが析出することを確認した。この結果から塩の生成についての学習を行い,さらに硫酸と水酸化バリウム水溶液,硝酸と水酸化カリウム水溶液などでも実験し,他の酸とアルカリでも塩が生成することを確認した。最後に,今までの実験での観察結果から最終的に中性にならなくても酸とアルカリが反応すれば中和が起こっていることを確認し,この学習全体をまとめた。
 本単元のねらいの1つである[2,5],塩の生成の確認実験よりも水の生成の確認実験を先に学習するようにしたのは,生徒の実験技能を勘案し,1時間1時間という授業時間を有効につかうためである。この配列の方が生徒実験を効果的に授業に用いることができ,生徒が興味や関心を持続していきながら学習を進めていくことができた。また実験を用いた授業で陥りやすい授業時間の延長や,前時の積み残しを学習するために1時間余分に授業を行うような時間の無駄使いもなく,1時間の授業時間内に実験のまとめに必要な思考や討論の時間を十分にとることができた。
 以上のような学習展開は普通の公立中学校で実践したとしても,金銭的負担も少なく,生徒が論理的に思考を進めていく上で,きわめて有効であると考える。

謝辞・付記

 本研究に際して,元北海道教育大学教育学部(旭川校)教授の横山隆允様には論文をとりまとめるにあたりご助言を賜りました。ここに謝辞を表します。また,本稿は2002年度日本理科教育学会北海道支部大会で発表した内容を加筆修正したものである。

文献・注釈

  1. 文部省:小学校学習指導要領(平成10年12月),大蔵省印刷局(1998)
  2. 文部省:中学校学習指導要領(平成10年12月),大蔵省印刷局(1998)
  3. 文部省:中学校学習指導要領(平成元年3月),大蔵省印刷局(1989)
  4. 文部省:小学校学習指導要領(平成元年3月),大蔵省印刷局(1989)
  5. 文部省:中学校学習指導要領(平成10年12月)解説−理科編−,大日本図書(1998)
  6. ウサノビッチの酸塩基説という。例えば,化学大辞典(東京化学同人,1989)pp. 223-224 を参照。
  7. 現在使用されている教科書は検定段階で,学習指導要領の基準を逸脱した記載は修正を求められた。イオンを学習しない現在の中学理科の教科書では,たった2社のみ,脚注に小さな文字で「同時に水が生成する」ということが書かれている程度である。脚注で取り扱ったのは,本文で記述してしまうと,教科書検定で不合格になり,採用されないと教科書会社が判断したためであろう。平成15年(2003年)12月に学習指導要領が一部改正され,現在検定中の教科書では多少逸脱したことも記載できるので,こうした問題はやや改善されつつある。
  8. 北海道教職員組合空知北支部滝川支会:2000年度教育白書(2000)
  9. 北海道教職員組合空知北支部滝川支会:2001年度教育白書(2001)
  10. 北海道教職員組合空知北支部滝川支会:2002年度教育白書(2002)
  11. 北海道教職員組合空知北支部滝川支会:2003年度教育白書(2003)
  12. 自治体の財力や政策の問題もあり,単純比較できないが,各学校はこの予算で,教材・教具の購入だけでなく,施設・設備の修繕や消耗品の購入,水道・光熱費も賄っている。また,理科教育振興法による補助が受けられることになっているが,昨今の地方財政の赤字状況を見ると,それも簡単なことではない。
  13. 細矢治夫ら:中学理科1分野上,p. 71,教育出版(1997)
  14. 古橋昭子,綿抜邦彦:「中和についての実験に関する一考察−生成する水を確認したい−」,化学と教育,29(3), pp. 217〜219 (1981)
  15. 今井昭二,高津戸秀,林康久:「水を含まない反応系における中和によって生成した水の視覚による確認」,化学と教育,39(1), pp. 84〜85 (1991)
  16. 谷川直也:「中和によって生成する水をつかまえてみよう−中和の定量化への導入実験−」,化学と教育,44(12), pp. 762〜763 (1996)
  17. 庄一志:「中和で生成する水と塩の確認」,化学と教育,47(3), pp. 170〜172 (1999)
  18. 長谷川秀吉:新訂小学校中学校理科薬品ハンドブック,p. 57,東洋館出版社(1993)
  19. アルミニウムによる水素発生では,見た目の発生量をほぼ同じにするために10%塩酸と5%水酸化ナトリウム水溶液で行った。水酸化ナトリウム水溶液の方がうすい濃度でもアルミニウムを入れた瞬間から反応するが,塩酸ではアルミニウムを入れてから水素発生を目視確認できるまでにやや時間がかかる。そのため,実際の授業では,生徒の目の前でアルミニウムを入れることはせず,あらかじめ反応させておくことが一連の学習を展開していく上で重要な準備となる。その際,水素発生量が同じくらいに見えるように溶液を稀釈して微調整する。
  20. 実際の授業では,塩酸のにおいを感じたり気がついたりした生徒はなく,粘度なども明確な差を感じとることはなかった。生徒への発問でも「先生が問いかけるぐらいだから違う物質では?」と予想した生徒は数名いたが,「化学的に明らかに違う」と認識していた生徒は皆無だった。
  21. 細矢治夫ら:中学理科1分野上,p. 67,教育出版(2002)

[TITLE]
The teaching materials of "the character of aqueous solution and neutralization" for science education of junior high school students

Faculty of Education, University of the Ryukyus
Akira YOSHIDA(whelk@edu.u-ryukyu.ac.jp)

[SUMMARY]
In the teaching materials of "the character of aqueous solution and neutralization", treated in the 1st grade of the junior high school, only the generation of salt was emphasized. Such description would disturb to understand the neutralization of acid by base, i.e., the fact of the mutual negation of their character accompanying by water generation. This paper presented a counter plan taking the "cheapness" and simplicity of the experiment into consideration. It is experiment teaching materials using cobalt(II) chloride(anhydrous) powder as an indicator which checks generation of water. And it is adapted for neutralization of glacial acetic acid and sodium hydroxide(solid). All students were able to conduct this experiment easily by themselves. All members could succeed in an experiment. Generation of water could be checked easily. They participated in a lesson (or lecture) very eagerly. Furthermore, they were able to interchange a student's result and the idea further. All members were able to understand the research for these firmly.


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