社会学とは

社会学とは

高校までの科目に社会学はありません。社会科の教科の中に「現代社会」などの科目はあるけれど、「現代社会」が社会学というわけではありません。
だから多くの人が大学ではじめて社会学に出会います。社会学とは何かといえば、社会を見る上での一つの考え方です。「社会によって、社会のできごとを説明する」のが社会学です。こういう考え方にもとづいて、さまざまな社会のできごとを、客観的な証拠をもとに分析を行うのが社会学です。
でも、この前半の「社会によって」というところがよくわからないですよね。簡単に言えば、社会のあり方が変われば、人々の行動の仕方が変わってくる。こういう社会だから、こんなことが起こるんだというような説明の仕方。これが社会学らしい考え方です。また社会学では、その逆に、人々がこんなふうに行動するから社会がこう変わっていくという考え方もします。「社会⇔個人の行動」というような、個人と社会が互いに影響を及ぼしあうあり方によって、社会のできごとをみようとするのが社会学だということです。

さきほど、多くの人が大学ではじめて社会学に出会うと書きましたが、高校までの社会科の授業でだってこういう考え方をすることも、しばしばあっただろうと思います。
たとえば、縄文時代、人々がお互いに殺しあうことがほとんどなかったことが知られています。なぜ殺しあわなかったのだろうか。いろいろな仮説が立てられるでしょう。縄文人は生まれつきおだやかな性格で、平和を好む性格だった、とか、殺しあうために必要な武具がまだあまり発達していなかったからとか、まだ農耕があまり盛んでなかったから、他人の耕した土地やためこんだ農作物を奪ったりする必要性がなかったからとか、人口密度が低かったので、住みよい場所がいくらでもあったからとか。
こうした仮説のうち、最初のもの(「もともとおだやかな性格」説)以外は、社会の状態によって、争いが生じるかどうかが決まるという考え方だと言えます。つまり社会学的な考え方をしていることになります。この考え方にしたがって、客観的な証拠を集めて実証するなら、それは立派な社会学だということになります。

なお、「教育社会学」「法社会学」などのように○○社会学というのは、社会学の中の個別の分野になりますが、これは「対象領域(たとえば教育)」+「方法論(この場合は社会学)」というかたちで名前がついています。つまり教育社会学というのは、教育という社会現象を分析する社会学だということです。
社会学を学ぶためには、まず自分がよく知っているはずのことを社会学的にみるとどうなるのかというところからはじめるのがおすすめです。その意味では、教育社会学から学んでみるのは良いでしょう。
教育社会学の入門書として次のものがお勧めです。
「なぜ僕らは勉強させられるのか? ドラえもんのアンキパンがつかえない理由」
 この本の第一章はこちらで読めます(なぜ僕らは勉強させられるのか①)。
大学では社会学をこのように学びます。コロナ禍のなかオンラインで行われた社会学概論の初回の授業を体験してみてください。
「ドラえもんの社会学  社会学入門」(ファイルの再生にはMicrosoft Officeが開ける環境が必要です)

社会学はどんな性格を持っているのだろうか

1 <社会学>はジェネラルな学問です。

社会学は、社会に関するどんなことでも扱います。歴史社会学や、都市社会学などは、歴史や地理に関する社会学ですし、法社会学や知識社会学は、法律や思想・哲学に関する社会学です。社会学を学べば、社会に出たとき、どんなことについても社会学的に分析し、自分で考えることができます。先輩の卒論を見れば、自分自身の人生上のテーマを、社会と関係づけて考えることができているのもわかると思います。
とはいえ、教育学部なので、卒論のテーマでは、教育や子ども、家族などに関することが多いです。自分の関心に近いものがあるかどうか、先輩の卒論のテーマから探してみてください。

2 <社会学>は「なぜ」ということを中心的に考える学問です。

歴史学等にももちろん「なぜ」ということを考える部分もありますが、社会学と比較すれば事実の把握をより重視しています。もちろん社会学だって、調査を行ったり、統計を利用したりしながら事実の把握にも力を入れますが、「法則性」や「一般化」をより大事にするところがあります。たとえば歴史社会学では、歴史学者が古文書などから明らかにしてくれた事実を用いて、大まかな一般化を試みます。

3 <社会学>は相対主義的で、常識を疑うのが好きで、<きれいごと>を嫌がります。

 社会学者は、人々の意識とか価値とかそういったものはみな社会が作り出したものだと考えてみる癖があるので、自分自身が持っている価値観を相対化し、今僕らが当たり前と思っているようなことでも、別の社会・別の時代なら違うんじゃないかといつも考えています。また、いわゆる<きれいごと>は、その社会の権力集団が人々に信じさせることで何か得をしてるんじゃないかと疑い、だまされまいと考えます。

4 <社会学>は、事実に基づいて検証することを重視します。

相対主義的で常識を疑うのが好きなのは哲学と似ていますが、哲学と違うところは、調査をしたり統計を使ったりすることで、見つけた法則を検証しようとすることです。


5 <社会学>は、事実のつながり、関係を重視します。

社会学は、<あっちの事実とこっちの事実>みたいなつながりを特に重視します。落語でいう「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな、一見とてもありえなさそうな関連性を、たくさんの証拠を積み重ねることで検証していくのが社会学の醍醐味です。社会のできごとに関する幅広い知識教養と、それを深く突き詰める論理的な思考力の双方が問われます。そういう意味でも、地理や歴史学と、哲学との中間的で総合的な性格が強いです。